「すごくないのがすごい」パーマカルチャー研究所@札幌

「パーマカルチャー研究所」を札幌で行っている三栗さんを訪ねました。
(2017年春の訪問でしたので、今はもっと進捗しています。)

今を生き延びているみなさんとシェアしたいエッセンスがたくさんありましたが、ざっくりとまとめるとこの3つ。

1.すごくない(誰にでも始められる)
2.遊暮働学
3.家族で楽しく

パーマカルチャー(permaculture)という言葉、すごく普及してきた気がしていますが、世間一般にはどれくらい浸透してるんでしょうか。簡単に補足しておくと、permanent+culture から生まれた言葉で、「持続可能な暮らしをデザインしていこう」という考え方です。

根本的なエネルギー問題の解決を求めていた三栗さんは勤めていた東京電力を退職し、博士号取得のために再び学生を始めますが、その冬休みにご家族とタイの農園を訪れます。そこで出会ったのが、このパーマカルチャーでした。

三栗さんの「パーマカルチャー研究所」では、どんなことしてるのか?
ということで、興味深々でお邪魔してきました。

1.すごくない(誰にでも始められる)

こちらが三栗さんのパーマカルチャー研究所のフィールドです。原生林です!

ここに“建物”ではなくて“キューブ型の車両?”をいくつも作り、ドッキング(連結)させています。この頃は5号まで出来てきました。

ちなみにこの頃は「モバイルハウス」とおっしゃっていましたが、私が「これのすごいところは移動(モバイル)できるところではなくてドッキングしていくところですよ。」と言ったからか、現在は「ドッキングハウス」と呼ばれています。(名付け親は私?)

さて、中はこんな感じです。(外観写真撮り忘れた・・・)
至ってシンプル!

3×6(サブロク)と呼ばれる規格サイズの合板と垂木(角材)、ポリカの波板(屋根用)という、一番安い材料の組み合わせで、構造も施工もとってもシンプルです。それでも、必要十分な強度を出しているのは、エンジニアである三栗さんの知識というか感覚に寄るところかなと思います。

このドッキングハウスのすごいところは、「すごくないところ」だと思いました。

ちょっと失礼にも聞こえる言い方になってしまいましたが、これがいま一番重要なものだと思います。

本とかウェブを見ていると、とっても素敵な、正確にいうと、ヴィジュアル的にも魅力的な小屋とかDIYで作ったお家だったり暮らしだったりが紹介されています。こういうのは多くの人に分かりやすいビジョンを与えてはくれるものの、それを実現させるには、資金、技術、知識、時間など、ハードルとは言わずとも踏んでいくためのステップがそれなりに多く、実際に初めの一歩に踏み切れる人は非常に非常に少ない気がします。

この点、三栗さんのドッキングハウスはユニット1つをまずは作れば良いし、合板を規格サイズのまま使っていてカットする手間も少ない分、作るのにも時間がかからなそうです。三栗さんによると、2人いれば2日で1ユニットできてしまうそうで、材料費は1ユニットあたり3万円弱(タイヤなしだと2万円)しかかからないそうです!

1回の週末で、マイホームの第一歩の下地ができてしまうなんて、すごくないでしょうか!?!?
誰にでも始められる!

インフラを見ていきます。

まず水まわり。

井戸(一番上の写真)から採った水を、この給水タンクに貯めて使っています。
3つ上の写真に写っているのがその井戸で、左手に持たれているのが手作りの井戸掘り機です。
一度、ビット(先の切削用部分)を中に落としてしまい、拾い出すのに苦労されたことも楽しく話されていました。

この井戸水、当初は鉄臭かったため、炭のフィルターを作ってみたら、においが取れたそうです。
そして、排水は畑に流しています。

右下に写っているのがストーブで、時計ストーブと呼ばれる小型軽量の薪ストーブです。
北海道というロケーションで、この合板(OSB)1枚という造りですので、断熱性はないに等しく、
そもそも、隙間に対して大らかなつくりのため、室内全体を暖めるのではなく、ストーブの前で暖をとるという従来の日本式の考え方をしています。
実際に、ストーブの前でコーヒーを頂きながらたくさんお話をしましたが、(4月末の札幌では)大丈夫な暖かさでした。

電気はこちら。
オフグリッドソーラー発電で、電力会社に頼らず(買いも売りもせず)自給しています。

簡単に導入できるので、興味ある方は三栗さんやお近くの詳しい人(最近は普及活動している人が全国にいます)に相談してみてはどうでしょうか。

そして、お手洗い。そう、トイレはこちら。
別棟になってます。

彷徨える湖・ロプノールが如く、地面に掘った穴がアレでいっぱいになったら、新たな地面を求めて移動します(移動させます)。
アレをした後は、ストーブの灰をかけると臭わないそうです。

水洗トイレはトイレのあるその目の前の空間こそクリーンな感じですが、水を流したその先の先、見えないところで汚泥として集められ、エネルギーをかけて濃縮、脱水、焼却、輸送されて、埋め立てられたり、セメントなどの建材の原料となっています。

これまでの競争、奪い合いの時代では、なかなか成せない「すごい」ものごとほど、つまり希少性が高いほど、価値があるとされてきましたが、これからの共生、シェアの時代では、誰にでもすぐに真似できる「すごくない」ものごとの(経済的ではなく)社会的な価値が大きくなっていきます。

この意味で、三栗さんのドッキングハウスは、これからの社会において本当に大事なものを体現しているように感じられました。

2.遊暮働学

そして、三栗さんが作ったことば「遊暮働学」が印象的でした。

・遊び
・暮らし
・働き
・学び

いまの主流の社会ではこれらは全てがいびつに切り離されています。
食料をスーパーで買ったり、家をローンで買ったり借りたりと、暮らしのためにはお金が必要で、そのために働きます。そして、余暇(余った暇!)でストレス発散だったり、満たされないものを満たすために趣味やショッピングして遊びます。そして、これにもお金がかかるのでもっと働かなければならない。そして、そもそも良い収入を得るためには、良い大学を出たり、専門知識をつけるために学校に行かなければならなず、そのためにはお金が必要で、状況によってはサラ金と呼んでも良いような有利子の貸借型奨学金を使うことになり…と、なんだか大変なことになってしまうシステムになっています。また個人レベルだけの問題ではなく、お金を介することにより、直接手を下さなくても、その取引の先の先の先で、悪いことをしてしまってる。そして、上手く隠蔽されていたり、無意識でいられたりしている。その積み重ねがいまの世の中そのものだと思います。

ちょっと暗くなっちゃいましたが、これに対して、「遊暮働学」では、家は自分たちでつくり(一週間あれば3ユニットできる!)、水は井戸水で当然無料、食べ物は自給畑か原生林で野草を採ってきて食べられる。そして、それ自体を家族や仲間とやって楽しいから、他にわざわざお金をかけて遊ぼうとは思わない。そして、それ自体が既に働きであり、学びでもある。

遊び/暮らし/働き/学び

これら全てが一つになっている。

こういう暮らしは今でこそ特別に感じられますが、そんなに遠くない昔まで脈々と続いていたもののはずで、
戦後の経済成長の中で一気に分断・解体されていった、実は当たり前のものではないでしょうか。

3.家族で楽しく

今回の訪問の中で、一番印象的だったのは何よりも三栗さんとご家族の楽しそうな姿でした。
原生林のフェールドに連れていっていただく前に、ご自宅を案内していただけたのですが、なんでもその理由が「一人でこういうことをやってると怪しい感じがするので、先に家族に会って安心してもらおうと」とのことでした(笑)
その狙い通り、素敵な奥さんと可愛いお子さんたちと楽しい時間を過ごさせてもらいました。

そのお家にもDIYで作ったアイテムがありました。

まずは床暖房。

熱源はストーブの上に置いた鍋のお湯で、これを電動ポンプでチューブ内に循環させています。

次は発酵器。
電気ヒーターとサーモスタッドで発泡スチロール内の温度を一定に温めてくれます。
これで、パンの発酵、ヨーグルトなど、発酵食品が作れるそうです!

「パーマカルチャー研究所」では、こういったアイテムやドッキングハウスを一緒に作るワークショップも行なっています。
自分の手でこういうものを作ってみることは、自分の生きる力や生きることのエッセンスに気づくきっかけになると思います。
ぜひ札幌の方、札幌に行かれる方はチェックしてみてください。

パーマカルチャー研究所
https://www.permaculture-lab.com/

パーマカルチャー研究所のブログ
https://plaza.rakuten.co.jp/hokkaidopapa/